08年6月の記録
(08.6.2) TOPIX 1425P(+16) 日経平均 14440円(+101) 22.6億株 2兆7828億円)NYダウは12638ドル(-7)とわずかにマイナス。ザラバ高値は切り下がり、アヤ戻しの水準の9日線までしか戻れていません。
NYダウは景気(企業業績)の動向を現す200日線に(a)で到達し、25日線まで下げたあと(b)で2度目のチャレンジをしましたが、ここからは急落して75日線まで下げました。200日線を上回る(景気がよくなる)ことは現状では難しいということを表明したのでした。
同じ軌跡をナスダックが辿ろうとしているのではないかと思っています。先週末のナスダックは2522P(+14)と小幅続伸して200日線に到達しまし た。(a)に続く2度目の200日線への挑戦です。これがさらに高くなって、5日連続して200日線以上の水準を維持できるのかどうか。目下の最大の焦点 です。
東京市場は続伸。この動きはナスダックと同じ動きですが、ナスダックは5月半ばの(a)の高値を上抜いていないのに、東京市場はTOPIX・日経平均ともに戻り高値を更新しました。
特にTOPIXは200日線(1434P)にあと9ポイントの1425Pまで上昇し、ワンチャンスで200日線にタッチする位置まで上昇しています。
だがNYダウ、ナスダックが200日線を超えるのに四苦八苦している現状ではTOPIXだけが200日線を軽々と上抜くとは考えられません。
いまはいつ小波動がピークを出すのかを見ている時期ですが、ピークらしさのポイントを見ると、
- 今日は新高値(1ポイント)。
- 9日順位相関が+80以上になるのは、明日は無理で、明後日以降。
- 逆張り用のNO.2「日経平均用'96」の売りマークがでないのは、9日順位相関が80以上になっていないためで、これも明後日以降にしか売りマークはでない。
- 25日騰落レシオは、明日は120を超えそう(2ポイント)
- 東証1部のPERは4月下旬以来売りを表明している(3ポイント)
明日・明後日の動きでピークらしさがわかるのではないか。
③4つの仕掛け
②「原則に基づいた理想の売買」は図のようになります。4とおりの仕掛け-手仕舞いのしかたがあります。
- 下降トレンドに転換したことが確定した(A)で売り仕掛けをして(a)で手仕舞いすることを目標とする。これは「トレンド転換売り」といいましょう。
- 小波動のピークらしいところで売り仕掛けをする。(B→b)(C→c)(D→d)がそれです。これは「戻り売り」といいます。
- 上昇トレンドに転換したことが確定した(W)で売り仕掛けをして(w)で手仕舞いすることを目標とする。これは「トレンド転換買い」といいましょう。
- 小波動のボトムらしいところで買い仕掛けをする。(X→x)(Y→y)(Z→z)がそれです。これは「押し目買い」といいます。
上昇トレンドにあるときに、買い仕掛けしかしないのは下降波動(w→X)(x→Y)(y→Z)の値幅よりも上昇波動(X→x)(Y→y)(Z→z)の値幅のほうが大きいからです(上昇トレンドの最後の上昇(Z→z)は下降波動(y→Z)より小さいことがある)
神様であれば上昇トレンド・下降トレンドを判別する必要はありません。ピークで売り、ボトムで買うことができるからです。しかし人間はボトムであるピークであると判断するのは遅れます。
ピーク・ボトムだと判断できるのが、図の目盛りで2単位分であるとしましょう。ピークから2単位下げた(A)でピークをつけたわかり、ボトムから2単位上げた(a)でボトムをつけたことがわかります。
このとき、(A)で売り仕掛けをしていたなら(a)で手仕舞いするので、(A-a)の差の2単位分が利益になります。もし(a)で買い仕掛けをして(B)で手仕舞いしたならば(a-B)の差1単位分が損失になります。
図のすべての小波動を取ろうとして売り仕掛けと買い仕掛けをした場合は
- 下降トレンドでの売り仕掛け
(A→a) +2単位の利益
(B→b) +1単位の利益
(C→c) ±0
(D→d) -2単位の損失 - 下降トレンドでの買い仕掛け
(a→B) -1単位の損失
(b→C) -1単位の損失
(c→D) -1単位の損失
となります。下降トレンドでは買い仕掛けは不利です。 - 上昇トレンドでの売り仕掛け
(E→e) -1単位の損失 - 上昇トレンドでの買い仕掛け
(d→E) ±0
(e→F) +2単位の利益
となります。上昇トレンドでは売り仕掛けは不利です。
①小波動の値幅はどれほどなのか、②判定ロスはどれくらい出ると見込んでおけばよいのか、③どういう判定をすればロスを最小にとどめることができるのか、を知っておくことは重要です。そこで、まずは過去の日経先物のグラフから、小波動の値幅の統計を採ってみます。
(08.6.3) TOPIX 1407P(-17) 日経平均 14209円(-230) 22.8億株 2兆7595億円)
米国は金融機関の不安材料がでて下落。S&Pはメリル・モルガンS・リーマンなどの証券会社の格付けを引き下げ、リーマンは資本増強をすると報道がありました。
NYダウは12503ドル(-134)と下落し、75日線を割り込む。4連続して終値は75日線を上回っていましたが、5日間の維持はできなかった。
ナスダックは2491P(-31)と下落するが25日線を維持しています。もっとも米国市場の全体像を表現しているのはS&P指数だと思いますが、これはNYダウとナスダックの中間にあります。すなわち25日線を下回っているが75日線までは下げていません。
ただしナスダックは先の小波動のボトムを下抜いていないが、NYダウ・S&Pは小波動のボトムを下抜いており、中勢波動は下降トレンドになっているのではないかと思われます。
東京市場は、米国株安から為替が円高方向に振れて下げる。しかし思ったほど下落しませんでした。この程度の下げでは押し目買いが入る水準ではないと思いま すが、それなのに買い物が入る。今期は減益、高いPER水準、目下の原材料高という要因から株価上昇の余地はないと思っていますが、買い意欲は衰えませ ん。 私の考えが及ばないのか、どういう根拠で買っているのかわかりませんが、株式市場がグローバル化した以上、世界の株式市場(特に先進国の市場)はだいたい が同じような動きになるはずです。グラフが悪い順にいうと、
- NYダウは75日線を下回っています。
- ロンドンのFT100は25日線と75日線の中間にあるが75日線に接近し、
- S&Pは25日線と75日線の中間にあります。
- ナスダックはザラバで25日線にタッチしました。
- S&Pは25日線と75日線の中間にありますが、
- 日経平均は9日線より上位にあり、
- TOPIXはもっと高い位置にあります。
④小波動の姿
小波動の姿の統計をとります。「姿」としては図のように、
- 上昇波動の上昇幅(H1-L2)
- 上昇波動の上昇率(H1/L2×100)
- 上昇日数(L2からH1の日数)
- 下降波動の下落幅(L1-H1)
- 下降波動の下落率(L1/H1×100)
- 下降日数(H1からL1の日数)
使う条件表は次のようになります(設定したのは(拡張8)のNo.199です。のちに(拡張8)条件ファイルをアップするのでダウンロードしてください)
条件表の内容について説明します。
上図の(L1)は(a)時点の直近の小波動のボトムです。これはNo.3行の「1本前 主な安値」でボトムの株価(ザラバ安値)をとりだせます。
上図の(H1)は(a)時点の直近の小波動のピークです。これはNo.4行の「1本前 主な高値」でピークの株価(ザラバ高値)をとりだせます。
上図の(L2)は(a)時点の直近ボトムのもう1つ前の小波動のボトムです。これはNo.5行の「2本前 主な安値」でボトムの株価(ザラバ安値)をとりだせます。(L2,H1,L1)の株価がわかると、
- No.6行の(L1-H1)の計算で、下落幅が求まります。(④)
- No.7~No.9行の計算で、下落率が求まります。No.9行で「×10倍」しているのは、上昇率の少数以下の桁を増やすためです。(⑤)
- No.10行の(H1-L2)の計算で、上昇幅が求まります。(①)
- No.11~No.13行の計算で、上昇率が求まります。No.13行で「×10倍」しているのは、上昇率の少数以下の桁を増やすためです。(②)
- H1からL1の下降波動の期間は、No.17行で計算されます。(⑥)
- L2からH1の上昇波動の期間は、No.18行で計算されます。(③)
- いつこれらのことを調べるかというと、小波動のボトムが確定したときです。No.19行で「3日 H&L転換」が買い(ボトムが確定する)になった日に「買い」の条件をつけます。
小波動の統計をとります。
- 1009「日経先物」を選択して
- 「計算」→「平均とSD」(または図のツールバーの絵)をクリック。
「平均・SDの計算」の画面が現れるので、次のことを指示します。 - 「連結」にする。(「標準」のときは過去500日分のデータしか扱えない)
- (拡張8)の条件表No.199「小波動の姿」を選択する。
- 検索期間は、(970501~080531)とする。1997年5月から2008年5月までの11年間の統計をとります。
- 「売買共」を指定し、
- 「開始」ボタンをクリックすると、
- ほぼ瞬間(10秒くらい)に計算が終わります。
④は下降波動の下落幅の平均値です。114個の下降波動は平均して-1262.0円ほど下落しています。
⑤は平均下落率です。-86.7とあるのは10倍した数値なので、正しくは-8.67%の下落をしています。
全体 | 値幅 | 変動率 | 日数 |
下降波動 | -1262.0円 SD(831.5) 最大 -4990円 最小 -250円 | -8.67% SD(4.94) 最大 -25.02% 最小 -2.14% | 11.5日 SD(8.8) 最長 42日 最短 1日 |
上昇波動 | 1227.5円 SD(647.6) 最大 +3430円 最小 +400円 | +9.52% SD(4.99) 最大 +27.49% 最小 +2.63% | 12.3日 SD(9.4) 最長 55日 最短 2日 |
- 下降波動の値幅(-1262.0円)と上昇波動の値幅(+1227.5円)はほぼ同じです。ひと波動でだいたい1200円あると思っていればよい。
- 変動率は、下降波動の下落率が-8.67%に対して上昇波動の上昇率が+9.52%とあります。約10%ほど数字が大きくなっています が、これは下落率の計算式が(ボトム÷ピーク)なので、常に小さい値(ボトムの株価)を大きい値(ピークの株価)で割っているからです。
上昇率の計算式は(ピーク÷ボトム)なので、常に大きい値を小さい値で割っています。ために数字は大きくなります。例えばピーク(H1)の株価が 10000円で、ボトム(L1)の株価が9133円であるときの下落率は (9133-10000)÷10000×100=-8.67%と計算されます が、逆に(L1)の9133円からピーク(H1)を振り返ったときは、(10000-9133)÷9133×100=+9.49%になります。これは上 昇率の平均の+9.52%とほぼ同じです。ボトムから見たときピークは上昇波動・下降波動のどちらも+9.5%ほどであると思ってよい。 - 下降波動の日数は11.5日です。これはピークの翌日から11.5日目にボトムがあるという意味です。ピークの日も含めるなら1日加えて12.5日になります。
上昇波動の日数は12.3日なので下降波動よりも1日弱長くなります。上昇波動・下降波動ともにその値幅は同じなので、下降波動は短期間に急角度で下げる といえます。としてもだいたいピーク(ボトム)の翌日から12日目あたりにボトム(ピーク)を出すと思っていればよい。
(08.6.4) TOPIX 1430P(+23) 日経平均 14435円(+226) 26.4億株 2兆7205億円)
米国は続落。 NYダウは12402ドル(-100)と下落。昨日に引き続いて、この下げ波動での安値を更新し、2日連続で75日線を割り込む。
ナスダックも2480P(-11)と下落するが終値では25日線をなんとか維持しする。
NYダウは先の小波動のボトムの12715ドルを割り込んで、さらに300ドルほど下落しています。先のボトムは最近の戻り高値13136ドルへのス タートとなった地点ですが、これを割り込んだ(最後の上昇波動が否定された)ことによって、中勢波動は下降トレンドになったのではないか?の疑念があり ます。
ただ(12715ドル→13136ドル)の上昇幅は421ドル(+3.31%)と小さく、これをもって重要な小波動としてよいのかについては少し躊躇があ ります。例えばその前の上昇波動(12269→13132ドル)は862ドル(+7.03%)で、並の値幅でした。その前は(12176→12733ド ル)で557ドル(+4.57 %)と小幅でしたが、最後の上昇波動よりも値幅は大きかった。
よって、①株価終値が5日連続して下回るか、②2つ前の小波動のボトムの12269ドルをザラバで下抜いたときに、NYダウの中勢波動は下降トレンドになったと確定しようと思っています。あと140ドルほどあります。
東京市場は今日も妙な動きとなりました。米国株安にもかかわらず上昇し、昨日の下げを取り返す。とくにTOPIXは昨日の下げ幅以上の上昇をし、200日線が目前になりました。
私は200日線は景気(業績)を表す水準だと思っているので、今のところの今期の経常利益の伸び率の予想が-5.7%では絶対にこれを上抜くことはできない。
当初の予想が悲観的だったために、今後上方修正が期待できるとしても、せいぜいがトントン(0%)でしょう。そうなら現状のPERが17倍を超える水準は「割高」であるといわざるを得ません。
買い方は何を根拠にして買っているのか。???です。
⑤統計の基礎知識
上表には「SD」という数字が掲げられています。SD(standard deviation)は「標準偏差」のことです。SDはバラツキの程度を表現しています。この数値が小さいほど平均値の近くに散らばっており、SDが大き いと平均値からの散らばりかたが広いことがわかります。同じ平均値であってもSDの値が大きければその平均値はさほどの意味を持ちません。SDを使えばその母集団(この例では114個の小波動)の確率を知ることができます。例えば上表の下降波動(114個)の値幅の平均値は-1262.0円で、SDは831.5(円)でした。
日経先物の呼び値は10円キザミなので、-1260円か-1270円下落した小波動はありえますが、平均値の-1262.0円ピタリの下落をした下降波動はありません。 ただ平均値の近くの-1200円とか-1300円とか下落した下降波動は多いでしょう。
平均値を挟んでどのくらいの範囲に多くの下降波動が分布しているかは、図の「正規分布の確率」で知ることができます。図は平均値を中心して緑色・黄色・橙色で塗り分けられています。数字は確率を表しています。
- 例えば緑色のゾーンは34.13%となっています。これは(平均値)~(平均値+SD)の範囲に全体の個数の34.13%が含まれるということを 意味します(図の中心線から右側の緑色)。同じく(平均値-SD)~(平均値)の範囲に全体の個数の34.13%が含まれるということを意味します(図の 中心線から左側の緑色)。
下降波動の例では、平均値(-1262.0円)、平均値-SD(-2093.5円=-1262.0-831.5)、平均値+SD(-430.5円=- 1262.0+831.5)と計算できるので、下落幅が-2093.5円~-1262.0円の下降波動は全体(114個)の34.13%あるといえます。 114個の34.13%は38.91個です。
同じく下落幅が-430.5円~-1262.0円の下降波動は全体(114個)の38.91%あるといえます。114個の34.13%は38.91個です。 平均値(中心線)の左右の確率を合わせると、下落幅が-430.5円~-2093.5円の間にある下降波動は68.26%、114個のうち77.82個あることになります。 - 黄色のゾーンは13.59%となっています。これは(平均値+SD×2倍)~(平均値+SD)の範囲に全体の個数の13.59%が含ま れるということを意味します(図の中心線から右側の黄色)。同じく(平均値-SD×2倍)~(平均値-SD)の範囲に全体の個数の13.59%が含まれる ということを意味します(図の中心線から左側の黄色)。
黄色と緑色を合わせると(平均値-SD×2)~(平均値+SD×2)のゾーンになります。この範囲の下落幅である下降波動は全体の95.44%(= 13.59+34.13+34.13+13.59)が含まれます。 下落幅が(平均値+SD×2)とは+401.0円(+値の下落率はありえないので、0円とする)です。下落幅が(平均値-SD×2)とは-2925.0円 です。下落幅が0~-2925円の下降波動は114個のうちの95.44%(108.80個)になります。逆にいえば-2925円を超える下落幅の下降波 動は5~6例であることが統計的に推定できます。
(実際にも下落幅が大きい順に、①-4990円、②-3510円、③-3380円、④-3220円、⑤-3190円、⑥-3110円、⑦-3090円、⑧-2840円 となっており、(平均値-SD×2)の-2925円を超える下降波動は7例でした。)
平均値とSD(数値はσ(シグマ)で表現する)を利用したチャートがボリンジャーバンドです。
図は25日平均線と25日間の平均値からの株価のバラツキ(SD)を計算し、平均線の上にSDの1倍をプラスマイナスした(1σのピンク色線)、SDの2倍をプラスマイナスした(2σの緑色線)、SDの3倍をプラスマイナスした(3σの紫色線)を描いています。
上図「正規分布の確率」を見ると、平均値+2σを超える株価の確率は2.28%です。25日間で+2σの緑色線を突破するのは0.57回です。50日に1 回の確率であることになります。平均値-2σを超える株価の確率は2.28%なので、25日間で-2σの緑色線を下に突破するのは0.57回です。50日 に1回の確率であることになります。
ボリンジャーバンドの使いかたは2とおりあります。
- +2σの線を上に突破することはめったにない(2.28%)ので、突破したら売る。
- -2σの線を下に突破することはめったにない(2.28%)ので、突破したら買う。 これが統計からの正しい使いかたでしょう。
- しかしめったにおきない「+2σの線を上に突破」が起きたのは、これまでの相場つきとは違ってきたと考えてもよいから、突破したときから買う。
めったにおきない「-2σの線を下に突破」が起きたのは、これまでの相場つきとは違ってきたと考えてもよいから、突破したときから売る。
という正反対の投資方針にすることも考えられます。
ついでのことながら、 - 平均値やSDが終値から算出されているので、終値が突破したかどうかを見るべきで、ザラバの高値・安値で突破とするのはおかしい。
- 1997年5月1日から2008年5月30日までの2727日間について、終値が+2σを上に突破した日を「単独検索」で検索したら129回あった。これは2727日のうち4.62%にあたり、「正規分布の確率」の+2σの確率2.28%よりかなり大きい。
同様に-2σを下に抜けた日は175日あって2727日の6.27%に当たる。2.28%の3倍近い出現率でした。統計からは少しずれています。